求職者には見えていない「面接官の頭の中」Vol.2
「給与が低いから辞めました」――面接官は「あなたはいくらなら納得するの?」と考えているかもしれない
転職面談で退職理由をお聞きすると、非常によく出てくるのが、
「給与が低いから転職したい」
「仕事量に対して給与が見合っていない」
「何年働いてもほとんど昇給しない」
「同年代と比べて年収が低い」
「責任だけ増えたのに給与が変わらない」
「家族が増え、今の給与では将来が不安」
どれも転職を考える理由として、おかしなことではありません。
生活するために働いている以上、給与は重要です。転職によって年収を上げたいと考えること自体も、決して悪いことではありません。
ただし、面接で、
「今の会社は給与が低いので転職したいです」
とだけ話してしまうと、面接官は別のことを考え始めるかもしれません。
面接官は「給与を上げたいこと」を問題にしているとは限らない
まずお伝えしておきたいのは、
「給与を上げたい」と言ったら印象が悪くなる
という単純な話ではありません。
中途採用では希望年収を確認することも一般的です。企業側も、転職によって待遇改善を希望する人がいることは理解しています。
問題は、
「なぜ、あなたの給与は上がるべきなのか?」
です。
ここが説明できないまま、「今の会社は給与が低い」「年収を上げたい」「もっと評価してほしい」と話してしまうと、面接官にはいくつかの疑問が生まれます。
面接官の頭の中①「あなたはいくらなら納得するの?」
面接官の頭の中
「給与が低いというけれど、この人はいくらなら納得するのだろう?」
「給与が低いから転職したい」と聞いたとき、まず面接官が気になるのは、「では、この人はいくらなら納得するのだろう?」ということです。
現在の年収が400万円だから、450万円なら満足なのか。
500万円を希望しているのか。
あるいは入社時に500万円でも、数年後に給与が上がらなければ、また不満を持つのか。
「給与が低い」という言葉は、実はかなり曖昧です。
たとえば年収400万円を「低い」と感じる人もいれば、仕事内容や勤務時間、地域、年齢などを踏まえて「妥当」と考える人もいます。
だからこそ面接官は、「何を基準に低いと判断しているのだろう?」と考えます。
面接官の頭の中②「その希望年収に見合う経験・スキルはある?」
面接官の頭の中
「当社がその給与を払うだけの経験・スキルを、この人は持っているだろうか?」
ここは少し耳の痛い話かもしれません。
求職者側には、「これだけ仕事をしているのだから、もっと給与をもらってもいいはず」という思いがあるかもしれません。
しかし採用する企業が考えているのは、「当社がその給与を払うだけの経験・スキルを、この人は持っているだろうか?」です。
現在の給与と転職市場での市場価値は、必ずしも同じではありません。
現在の会社の給与水準が低く、転職するだけで年収が上がるケースもあります。
一方で、現在の会社だからこそ高く評価されている経験だったり、他社では同じ給与水準にならなかったりするケースもあります。
「今の給与が低い」ということと、「転職すればもっと高い給与をもらえる」ということは別の話です。
私たち転職エージェントも、希望年収をお聞きしたときには、
・現在の年収はいくらなのか
・これまでどのような経験をしてきたのか
・どのような成果を上げてきたのか
・転職市場では、その経験がどの程度評価されそうなのか
を見ています。面接官も同様に、希望年収だけではなく、その金額を希望する根拠を見ています。
面接官の頭の中③「給与が上がれば、仕事内容は何でもいいの?」
面接官の頭の中
「この人は何を目的に転職するのだろう? 給与が上がれば仕事内容は何でもいいの?」
退職理由も転職理由も「給与です」だけだった場合、面接官によっては、「仕事内容や会社には、あまり興味がないのでは?」と感じる可能性があります。
さらに、「当社を志望しているのも、給与が高いからなのでは?」という疑問にもつながります。
もちろん、給与は会社選びの重要な条件です。
しかし企業側は、給与だけでなく、
・この仕事をしたい
・この経験を活かしたい
・この領域へキャリアを広げたい
・より責任のある仕事をしたい
といった仕事そのものへの動機も確認したいと考えています。
なぜなら、給与だけで選ばれてしまうと、さらに条件の良い会社が現れたときに転職してしまう可能性を考えるからです。
面接官の頭の中④「もっと給与の高い会社があったら、また辞める?」
面接官の頭の中
「当社より高い給与を提示する会社が出てきたら、また転職するのでは?」
採用企業にとって、ここは大きな懸念です。
仮に現在の年収が400万円で、転職先が450万円を提示したとします。
本人は「50万円上がるので満足です」と考えていても、面接官からすると、「では、500万円を提示する会社が出てきたら、そちらへ行くのでは?」という疑問が残ります。
面接官が退職理由を聞くとき、確認しているのは過去だけではありません。
常に、「この人を採用した後、同じ理由で辞めないだろうか?」という未来も見ています。
「同年代より給与が低い」も、実は注意が必要
面談で、「友人や同年代と比べても、自分の給与は低いんです」という話を聞くことがあります。
これも本人にとっては重要な問題でしょう。
ただ、面接では少し注意が必要です。
面接官の頭の中
「誰と、何を基準に比較しているのだろう?」
同じ30歳でも、業界、職種、会社規模、役割、経験、勤務地によって給与水準は異なります。
友人が年収500万円だから、自分も500万円が妥当とは限りません。
転職市場で重要なのは、「周囲と比べていくらなのか」ではなく、「自分の経験やスキルが市場でどう評価されるのか」です。
さらに危険なのは「これだけやっているのに、この給料です」
面接で給与への不満を説明しようとして、
「これだけ仕事を任されているのに、この給料なんです」
「責任ばかり増えて給与が上がりません」
「会社は社員に還元してくれません」
と話してしまうことがあります。
これも事実かもしれません。
しかし面接官が知りたいのは、前職の給与制度がどれだけ悪かったかではありません。
むしろ、
「具体的にどのような責任を担っていたのか?」
「どのような成果を上げたのか?」
「その経験を当社でどう活かせるのか?」
という部分です。
「給与が低かったこと」を一生懸命説明するより、「自分が提供できる価値」を説明した方がいい。
面接官は「次の質問」で確かめてくる
「給与が低いから転職したい」と答えた場合、面接官から次のような質問をされるかもしれません。
「現在の年収はいくらですか?」
「希望年収はいくらですか?」
「その金額を希望される理由はありますか?」
「給与以外に転職で実現したいことはありますか?」
「仕事内容と給与では、どちらを重視しますか?」
「希望年収に届かなかった場合はどうしますか?」
こうした質問は、単なる条件確認とは限りません。
面接官は、あなたが転職において何を重視しているのかを確認しています。
では「給与が低い」は言わない方がいい?
そういうことではありません。
給与が転職理由の一つなのであれば、無理に隠す必要はありません。
むしろ、「給与は全く気にしていません」などと本心と違うことを言う必要もありません。
大切なのは、
給与だけを切り離して話さないこと
たとえば、「担当範囲が広がった」「責任が大きくなった」「成果を上げた」「専門性が高まった」にもかかわらず、会社の給与体系上、今後も大きな変化が見込みにくい。
そのうえで、「これまでの経験をより活かせる仕事へ挑戦したい」「役割や成果に応じた評価を受けられる環境で働きたい」ということであれば、話の意味は大きく変わります。
「給与が低い」を4つに分解してみる
給与を理由に転職を考えている方は、一度次の4つに分けて考えてみてください。
① なぜ「低い」と感じているのか
単純に金額が低いのか。
仕事量なのか。
責任なのか。
成果なのか。
市場相場なのか。
まず「低い」の中身を具体的にします。
② 自分はどんな価値を提供してきたのか
担当業務、経験、専門性、実績、役割。
希望年収を考える前に、「自分は会社に何を提供できる人なのか」を整理します。
③ 給与以外に転職で変えたいことは何か
仕事内容。
役割。
キャリア。
働き方。
専門性。
転職理由が本当に給与だけなのか、もう一度考えてみます。
④ 次の会社で何を実現したいのか
「年収500万円にしたい」で終わるのではなく、その給与に見合うどのような仕事・役割を担っていきたいのかまで整理してみましょう。
NG回答と改善例
NG回答
「現在の会社は給与が低く、何年働いてもほとんど昇給しません。同年代と比較しても年収が低いので、もっと給与の高い会社へ転職したいと思っています。」
これでは面接官に、「結局、この人の会社選びは給与なのでは?」という印象を与える可能性があります。
改善例
「現在は〇〇を担当しており、入社当初と比べて△△まで担当範囲が広がっています。また、直近では〇〇という役割も任されるようになりました。
仕事そのものにはやりがいを感じていますが、現在の会社では年次を中心とした給与体系となっており、今後担当範囲や責任が広がった場合でも、処遇面で大きな変化は見込みにくい状況です。
今後は、これまで培ってきた〇〇の経験をさらに伸ばし、より責任のある仕事へ挑戦したいと考えています。そのうえで、役割や成果についても適切に評価いただける環境で長期的にキャリアを築いていきたいと考え、転職を検討しています。」
同じ「給与への不満」が出発点でも、
何をしてきたのか → なぜ転職なのか → 次に何をしたいのか
まで説明すると、受け取られ方は変わります。
転職エージェントから伝えたいこと
転職相談では、
「できれば年収を上げたいです」
という希望を非常によくお聞きします。
私たちも、年収アップを希望すること自体に問題があるとは考えていません。
むしろ転職を考えるのであれば、給与を含めて今後のキャリアを考えることは大切です。
ただし、
「自分はいくら欲しいか」だけでなく、「企業から見た自分には、いくらの価値があるのか」
という視点も持っておく必要があります。
そしてもう一つ。
面接官が知りたいのは、「いくら欲しい人なのか」だけではありません。
その給与を得るために、
「この人は当社で何をしてくれるのか」
を見ています。
給与について考えるときこそ、「もっと欲しい」から一歩進んで、「自分はどんな経験・スキル・成果を提供できるのか」を整理してみてください。それが、希望年収を企業へ伝えるときの「根拠」になります。
自分の希望年収や市場価値について相談してみませんか?
「今の年収は自分の経験に見合っているのか」「転職するとどの程度の年収が期待できるのか」「給与を含めた退職理由を面接でどう伝えればよいのか」。
共栄経営センターでは、これまでの経験やスキルを整理しながら、企業側の視点も踏まえて転職活動をサポートしています。
次回予告|求職者には見えていない「面接官の頭の中」
「上司と合わなかったので辞めました」――面接官が見ているのは上司ではなく「あなた」かもしれない
「上司に問題があった」という話をしているつもりでも、面接官が確認しているのは、実は上司のことだけではありません。なぜ「上司と合わなかった」という退職理由を慎重に確認するのか。次回も、求職者には見えにくい「面接官の頭の中」を転職エージェントの視点から解説します。
